世界史(イギリス王室・首相編19)ウィリアム3世とメアリ2世(後編)

奇数週木曜更新　世界史イギリス王室・首相編　今日もウィリアム3世とメアリ2世

　カトリック勢力はウィリアム３世を認めなかった。ジェームズ２世はフランス王ルイ１４世の援護を受け、アイルランドに渡って再起を図り、本土復帰を目指したので、ウィリアム３世はオランダ人部隊とともにアイルランドに遠征し、カトリック軍を鎮圧した。このウィリアム３世によるアイルランド征服によって、イングランドによるアイルランド植民地化はほぼ完成し、プロテスタント（国教会信者など）によるカトリック差別というアイルランド問題が今後深刻になっていく

　またウィリアム３世はスコットランドに対する征服活動も行い、１７０７年、アン女王の時にスコットランド併合への道を開いた。

内政では議会と協調して立憲君主政を推し進めた。ウィリアム３世を支持するホイッグ党(議会派)は、戦費を調達するために国債を発行することとし、イングランド銀行を設立した（１６９４年)これが現在各国が発行する国債の最初である。また、国債を発行して戦費をまかなうという財政政策、国立銀行を設立する新しい財政政策は、絶対王政時代には見られなかった新しいやり方で、現代国家に通じるものだった。
　ウィリアム３世はそれまで内閣の閣僚をトーリ(王権派)、ホイッグ両党から選んでいたやり方をやめ、ホイッグ党だけで内閣を編成した。その後戦争の長期化を嫌った地主たちが選挙でトーリ党を多く当選させると、トーリ党に内閣を編成させた。このように、議会で多数を占めた政党が内閣を構成するという政党政治が行われるようになった。

　メアリ2世との間に子供がなかったウィリアム３世は、王位継承順位を定めておく必要があったので、王位継承法を制定し(1701年)、イギリス国王はイギリス国教会に属すべきこと、カトリック教徒及びカトリック教徒と結婚したものは国王になれないことという原則を定めた。それによってカトリックであるジェームズ２世の子孫によるイギリス王位奪還の意図を予防した。具体的にはメアリ2世の妹のアンを指名し、アンの死後はプロテスタントであるジェームズ１世の孫娘でドイツのハノーヴァー選帝侯に嫁いだソフィアおよびその子孫と定めた。

スペイン継承戦争(1701年)が起きると、イギリスはオランダ、オーストリアと三国同盟を結び、フランス王ルイ１４世と対抗した。翌１７０２年、ウィリアム３世は乗馬中に馬が倒れ、肋骨を折ったのが原因で没。メアリ２世との間に子供はなく、王位は王位継承法によりメアリ2世（1694年死去）の妹のアンに継承される。アンの子供はみな流産含め死んでしまい、アンの死後、ソフィアの息子がドイツからジョージ１世として迎えられてハノーヴァー朝となる